重い電子系超伝導体UPt3で自発的に回転対称性を破った超伝導を検出

      2016/06/24

UPt3

 近年,UGe2,URhGe,UCoGeにみられる強磁性超伝導やCePt3Si,CeRhSi3,CeIrSi3でみられる空間反転対称性の破れた超伝導など,興味深い非従来型超伝導体が数多く発見され,その多彩でエキゾチックな超伝導状態に多くの注目が集まっています。それに対してUPt3は発見から30年近い長い歴史をもつ超伝導体ですが,A相,B相,C相の少なくとも3つの明確な多重超伝導相をもつ奇パリティ超伝導体として他とは一線を画する存在で,超伝導研究において最も重要な物質の一つです。これまでの数多い研究の結果, UPt3では既約表現E2uに属する超伝導対称性が実現していると長らく信じられてきました。しかしその一方で,このE2u対称性で期待されるギャップ構造は実験で直接的には確かめられてはいないことや, いくつかのUPt3に特徴的な実験事実を単純には説明することが出来ないといった問題点があり,実際には理解されているという状況ではありませんでした。そこで我々はUPt3の準粒子低エネルギー励起構造を調べ,C相で自発的に回転対称性を破った超伝導状態が実現していることを見出しました(左図)。そしてUPt3における超伝導対称性が,これまで長らく信じられていたE2u表現ではなく,E1u表現に属するf波超伝導であることを明らかにしました。さらにその対称性によりUPt3で四半世紀以上謎であったいくつかの問題が自然に説明できることがわかりました。

Twofold spontaneous symmetry breaking in a heavy fermion superconductor UPt3 Y. Machida, et al., Phys. Rev. Lett. 108, 157002 (2012).

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