研究内容

 我々のグループでは,強相関電子系とよばれる物質群でみられる異常金属状態や異方的超伝導状態などのエキゾチックな量子現象の研究をしています。

 物質には電気が流れるもの流れないもの,磁石に付くもの付かないものなど,様々なものがあります。そのような性質の多くは,物質中の電子の性質が現れたものです。通常の金属では,電子同士がうまく避けあうことで他の電子の存在を気にせず自由に運動していますが,我々が研究対象としている強相関電子系では,強いクーロン力によって電子同士が反発するため,もはや電子は自由ではなくお互い影響しあって運動しています。そのような状況では,電子の質量があたかも普通の電子の100倍〜1000倍,時には10000倍にも達して非常に動きにくくなった重い電子と呼ばれる状態になったり,さらにそのような重い電子が非常に奇妙な超伝導を起こしたり,通常金属では考えられないような多彩な現象が見られます。  我々は,そのような現象の解明はもちろんのこと,人類がまだ知らない新しい量子現象の発見を目指しています。そのために,20 mK(絶対零度まであと0.02度)という極低温,18 T(180,000ガウス)の強磁場,10 GPa(100,000気圧)の高圧といった多重極限環境下での実験など,チャレンジングな実験的研究に取り組んでいます。  例えば,そのような多重極限環境下でエキゾチック超伝導体の超伝導電子の形を調べることのできる世界的にもほとんど例のないシステム(図1)を開発し,それを用いたエキゾチック超伝導の発現機構の解明に取り組んでいます。

図1

図1:多重極限下角度分解熱伝導率・比熱測定装置